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「安全・安心」な引越を 「引越安心マーク」制度導入4年目に

全日本トラック協会、信頼マークとして提示

「引越安心マーク」をご存知だろうか。厳しい基準をクリアーした引越323運送事業者に付与される「信頼のあかし」だ。消費者には選択の目安として注目され、事業者には消費者目線の事業活動の推進に寄与するとして重要な意義を持つ。このマーク制度は2014年度に全日本トラック協会が自主的認定制度として導入した。トラックの車両に表示されたり、引越運送事業者のチラシや名刺などに記載されたりして、次第に各地で話題にのぼるようになった。スタートして4年目だが、安全・安心な引越サービスを保証する制度として、国土交通省も推奨制度に位置付けている。マーク認定事業者は現在323事業者(1862事業所)。制度の社会的定着をめざす全日本トラック協会・輸送事業部は「何よりも消費者に引越の安心マークとして認識していただき、選択に活用していただければ」と普及促進に力を入れている。同協会では6月から施行される新標準引越運送約款についても周知活動を展開する。

消費者志向活動を反映、国の推奨制度に

この「マーク制度」は2014年度に公益社団法人「全日本トラック協会」が「引越事業者優良認定制度」に基づく認定マーク制度として導入した。「引越安心マーク」の表記で普及が進んでいる。当該マークを印した引越事業者のトラックも各地で活動している(=写真)。

全日本トラック協会輸送事業部・礎司郎部長

同協会・輸送事業部の礎(いしずえ)司郎部長は「消費者が安心して引越業者を選べる目安として提示したものです。昨年12月には国土交通省の推奨制度にも位置付けられ、今後の普及へのステップとなりました。マークの認定基準は厳しく、遵守できずにマーク取り下げに至った事業者もこれまで二桁(けた)台あります」

国も推奨する信頼マークだけに、認定後の基準遵守にも注意を払っているという。礎さんは「今年で制度導入から4年ですが、引越安心マークの周知度は年々高まっています。現在は323の引越事業者が認定され、所在エリアも全国に及んでいます。消費者が安心して選べる引越事業者、そのあかしとして今後も普及促進を強化してまいります」

引越は消費者にとっては準備から完了まで非日常的な煩わしさと大変な労力を伴う。同協会・輸送事業部の竹内牧子課長代理は「消費者のご自宅に入って提供するサービスが引越事業です。消費者はサービスを受けた後でないと品質はわかりません。その不安感を取り除く意味でも確固としたサービス提供を保証するマーク制度は重要です。事業者にとっても消費者トラブルを回避する制度として期待されるものです」

消費者トラブルを防止し、消費者志向活動を推進していく、その重要な取組の一環として、同協会は引越安心マークの普及・定着を位置付けている。

【次ページ】信頼性を確保する厳しい審査基準とは!

信頼性を確保する厳しい審査基準

引越安心マーク制度は厳格な審査を前提とする。マークを取得する引越輸送事業者には厳しい要件が課せられる。それを取得後も常に遵守していることが「引越事業者優良認定制度」の特徴だ。

全日本トラック協会輸送事業部・竹内牧子課長代理

その要件の一つが「Gマーク」取得を前提にしていること。Gマークは同協会が2003年から運用してきた「安全性優良事業所マーク」のこと。安全性の高い運送事業所に付与されている。昨年12月現在、このGマークの認定事業所は全国に6597。「引越事業者優良認定制度」に基づく「引越安心マーク」は、このGマークをまず取得していることが対象となる。

礎部長は「安全対策を優先すること、そのためにGマーク取得を前提条件とし、その上で、クリアーすべき様々な要件を認定基準として盛り込んでいます。消費者相談窓口体制の整備・充実・強化も引越安心マーク認定への重要な要件です」

認定審査には行政・消費者・有識者などで構成する第三者機関が取り組む。認定申請事業者は引越標準約款をきちんと遵守していること、全日本トラック協会が実施する引越講習を受け、その修了者が各事業所に最低一人は従事していること、さらに「お客様相談窓口」を設置し、消費者対応に積極的に取り組んでいること、その窓口の責任者が年1回開催される研修会を必ず受講すること、などが求められる。

マークを取得するだけではなく、その後のチェックも厳格だ。3年毎の更新制度だが、更新事業者であっても、「全日本トラック協会のお客様対応窓口である“引越安心相談窓口”と連携し、約款や関係法令に沿ったお客様対応を行うため、当協会が開催するお客様対応責任者研修会議に出席することが義務付けられています」

申請書にはそう記載されている。その研修会議は今年の場合、4月~6月に開催されるという。竹内課長代理は「定期的な確認が必須なのです。そうでないと、マーク取得事業者が消費者トラブル防止と解決へ向けた社内体制を整備していることを保証できません」

消費者と事業者の話し合いや合意を重視して双方がうまく連携する、そのようなサービス提供に寄与するのが引越安心マーク制度の特徴とする。

標準約款改正にも対応、周知徹底を図る

信頼のあかし「引越安心マーク」

引越安心マークの認定基準の一つに、国交省が提示する標準引越運送約款の厳守があげられている。今年1月、この標準約款が改正・公布され、6月1日から施行されることとなったインターネットを利用した業者選定が増加していること、単身世帯が増加し、「積合わせ運送」への社会的ニーズが高まっていること、さらに運送ドライバーの圧倒的不足、などの環境変化が大きい。改正約款は他業種の標準約款も参考に国交省検討会で審議されてきた。引越運送事業の適正化を目指すもので、同協会ではその周知活動にも取り組んでいく。

礎部長は「それらを含め引越に際してわかりやすく紹介した消費者向けリーフレットの作成・配布も予定しています。引越トラブルにあわないように、下見を受けること、その上できちんとした見積書を作成・提供してもらうこと、実態にあわせてその点へのアドバイスも盛り込みたいと思います」

同協会では、混雑する引越シーズンを避けるために「分散引越」も提唱している。トラブルのない、より安全・安心な引越サービスの提供をめざす。

余裕を持った引越にこしたことはない。まずは、その一環として消費者には「引越安心マーク」の活用が求められる。

(本紙「ニッポン消費者新聞」3月1日号より転載。取材協力・全日本トラック協会)

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