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「てんとう虫情報」終刊 27年に渡り農薬問題を発信

反農薬東京グループの機関誌「てんとう虫情報」が3月をもって終刊した。同時に辻万千子代表が引退し、4月20日には事務所も閉鎖する。今後はスタッフが中心となり、ホームページでの情報発信を柱に活動を続けていく。同グループは企業や行政からの財務的援助を一切受けず、農薬問題に特化した草の根運動を展開。徹底した情報収集と科学的なデータ分析をもとに問題点をあぶりだし、行政に対策を求める姿勢を貫いた。辻代表は「住宅地での農薬の飛散防止対策を勝ち得たのは大きな成果だったが、まだまだ被害が発生している。他団体と連携する中で、運動を拡大することはできたが、十分な世代交代ができなかったことは残念に思う」と振り返った。

機関誌「てんとう虫情報」の最終号を手にする辻万千子代表。農薬問題の最前線に立ち続けた(12日午後、反農薬東京グループ事務所にて)

てんとう虫情報は1991年5月の創刊。事務所(西東京市)の開設とともに発行準備にとりかかり、約27年間、月1回の発行を一度も休まず続けてきた。今年3月の終刊号(第319号)は4ページ増の24ページ建てとし、読者の声を掲載。長年の労をねぎらう声や引退・終刊を惜しむ声であふれた。

農薬問題に特化して活動する団体は他になく、当初は「反農薬グループの孤独なたたかい」などと言われつつ最前線で戦ってきた。問題を見つけると、徹底した情報公開や聞き取りを敢行。科学的データを行政や国会議員に突き付け、対策を求める姿勢を貫いた。こうした取り組みはダイオキシンを含有していた水田除草剤CNPの使用禁止や、住宅地等における農薬飛散防止対策を盛り込んだ農水省・環境省通知につながった。

辻代表は「住宅地などの生活環境で農薬が散布され、被害が発生する事例は多い。昨年9月も埼玉県内の小学校で、殺虫剤散布により児童が病院に搬送された。創刊当時からこの問題に注力し、国から住宅地通知の発出を得られたのは運動の大きな成果。この通知を盾に、農薬散布に待ったをかけることができたケースは多い」と振り返った。引退の理由として、体力的な問題で代表としての役割を果たすことが難しくなったことを挙げた。辻代表は「後継者を育てなかったことは悔やまれるが、ネオニコチノイド問題を契機に農薬問題への関心が高まり、各団体による連携も進んでいる。今後は市民の立場から農薬問題に関わっていきたい」と締めくくった。

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