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静かに目を閉じた“ミスター消費者行政” 4月に偲ぶ会

消費者行政の最前線で40年以上にわたり陣頭指揮をとってきた及川昭伍さんが2月14日、静かに目を閉じた。3月に88歳の米寿を迎える直前の逝去だった。及川さんは経済企画庁退官時に「ミスター消費者行政」とメディアで紹介され、退官後も国民生活センター理事長、全国消費生活相談員協会会長などを歴任しつつ、消費者政策の推進に力を注いだ。陶芸に親しみ、若い世代には大手ファストフード店のキャラクターに容貌が似ていることで「カーネルおじさん」と呼ばれた。講演では「よく通るダミ声」が特徴だった。4月に「偲ぶ会」が予定されている。

2019年9月、都内で開催された集会で消費者問題の課題を説明する及川昭伍さん(中央)

及川さんは消費者行政の重大局面で、ニッポン消費者新聞のコメント要請にいつも快く応じていただいた。消費者庁・消費者委員会設置後のこの10年間は特にその頻度が増した。消費者問題の動きが激しいときこそ、そのコメントは的確だった。

及川さんは、消費者庁・消費者委員会設置法に「消費者の権利尊重と自立支援」が「任務」と明記されたことについて、「いよいよ消費者行政は消費者の権利を掲げ、その尊重を任務とする新たな時代を迎えた」「しっかりとした心柱を保って消費者・生活者のために真剣に正面から取り組んでもらいたい」と消費者庁職員にエールを送った。

だが一方、国民生活センターの消費者庁への一元化問題が浮上した際(2012年)は、「(職員は)消費者庁の理念を再認識すること。そして消費者庁を立て直す、そのような気概を持て」と叱咤し、「(消費者庁の)トップから一般職員まで心柱の再構築を」とニッポン消費者新聞で訴えた。消費者庁の機能発揮は「消費者目線」「消費者の権利尊重の視点」「消費者への軸足」などを認識することが前提、と熱く語っていた。

最も及川さんの思いを反映させているのが、及川さんが話し手となり、元内閣府国民生活局長で元国民生活センター理事、名古屋経済大学教授、同大消費者問題研究所所長などを歴任した田口義明さんが聞き手となってまとめられた『消費者事件・歴史の証言』(民事法研究会、2015年刊)だ。その中で及川さんは、パイオネット導入の契機、豊田商事事件の行政対応、PL法制定時の産業界・関連官庁からの要請などを紹介し、消費者行政推進への課題を提起している。「新しい道づくり」にまい進した及川さんの軌跡でもある。

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