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情報銀行の課題探る学習会 仕組み理解し消費者利益守れ

消費者の同意のもと個人データを預かり、信頼できる民間企業に提供する「情報銀行」というビジネスモデルが本格始動するのを前に、全国消費者団体連絡会は8月18日、消費者にとってのメリットや制度上の課題などを探るオンライン学習会を開催した。

講師の森亮二弁護士は「それぞれの情報銀行にはデータ倫理審査会が設置され、消費者代表として消費者団体の登板が増える。消費者利益に反するものはダメだと声を上げられるよう仕組みの理解を深めてほしい」と呼びかけた。

オンライン学習会で講演する森亮二弁護士(右)(提供:全国消団連)

全国消団連は新型コロナ感染拡大以降、3月の全国消費者大会をはじめ、会場参加型イベントを自粛してきたが、7月末からビデオ会議アプリ「ZOOM」によるオンライン学習会を開始。今回は開始後3回目の学習会となり、全国から加盟団体など53人が参加した。

情報銀行を巡っては8月現在、5社が名乗りを上げ、日本IT団体連盟により、1社がサービス運営中の「通常認定」を、中部電力や三井住友信託銀行など4社が今後サービスを開始する「P認定」を受けた。個人データとの引き換えに情報やクーポンが受け取れるサービスなどが計画されているという。

講演した森弁護士は情報銀行の仕組みや認定制度について解説した上で、それぞれの情報銀行に設置されるデータ倫理審査会の重要性を強調。「個人が不利益となる利用がされていないか」「個人が本人の情報を管理できる仕組みが適切に提供されているか」など基本的な審議内容を定め、審査会の役割に一定の共通認識を持たせることが望ましいと述べた。加えて、審査会の運営の適切性を担保するため、構成員を公表し、議事録についても必要な範囲で公開するべきだとした。

また、個人データの利活用が進む中、消費者団体の果たす役割は増加すると指摘。情報銀行のデータ倫理審査会のほかに、企業の個人データ利用についてもアドバイザリーボード(外部専門家委員会)の設置が推奨されていて、消費者代表として登板する機会が増えるとした。森弁護士は「政府の審議会であれ、民間の諮問機関であれ、消費者の利益に反するものはダメだと声を上げる必要がある」とし、「根拠を持ってダメと言えるためには仕組みの理解が必須。消費者保護の精神だけでは不十分だ」と行動を促した。

学習会では、個人データの利活用を岩盤規制が阻んでいることも指摘された。

森弁護士は「事業者がいろいろ工夫して、良いサービスを提供しようとしても、業法規制で消費者保護よりも既存事業者の保護が図られている場合があることに注意してほしい」と指摘。「むしろ競争関係にあるプラットフォーマーを参入させたほうが消費者にとって有利になることがある」とし、規制の再構築など環境整備を課題にあげた。森弁護士は「データ利活用による便利で豊かな、子ども、高齢者、障害者に優しい社会は消費者にとっても重要だ」と強調している。

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