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高校生が怪しいネット広告を調査、埼玉県に通報 見抜く力養う

来年4月からの成年年齢引下げを見据え、埼玉県は県立蓮田松韻高校と連携して11月18日、インターネット上の不当表示広告調査を公開授業で実施した。景品表示法について学んだ生徒らはSNSや検索サイトで怪しい広告を次々と見つけ出し、県に報告。県消費生活課は事例を精査して事業者指導につなげていく。授業を視察した西村隆男横浜国立大学名誉教授は「市民性・社会性とともに見抜く力を養うための優れた授業実践だ」と評価している。

スマートフォンやノートパソコンを使って怪しい広告を調査する蓮田松韻高校の生徒と調査を見守る県消費生活課の荏原智美さん(11月18日)

埼玉県は2007年度から県内の大学・高校と連携し、不当表示広告調査を行ってきた。今回の公開授業もその一環で、蓮田松韻高校は昨年度に続き2度目の参加。2年5組の生徒33人が前回の経験を活かし、インターネット上の怪しい広告調査に挑んだ。

調査を前に県消費生活課の荏原智美さんが景品表示法の概要を解説。優良誤認と有利誤認の違いや実際の違反事例などを紹介し、「昨年度は調査を通じて19件の事業者指導を行い、すべての表示が改善された。県の消費者被害を減らすために不当表示を見つけてほしい」と呼びかけた。

今回の調査は、前回報告の多かった「ダイエットサプリ」と「有利誤認」の広告表示がNGとなり、難易度が上昇。生徒は荏原さんらのアドバイスを受けながらSNSや検索サイトを調査し、育毛、白髪対策、歯ホワイトニング、口臭予防などの優良誤認表示を見つけ出して調査票に書き込んだ。

調査結果を報告した男子生徒はSNS上のマウスウォッシュ広告について、「15秒で息をきれいにしてお口の悩みが解消されるとは思えない」と指摘。もう1人の男子生徒も別の口臭対策商品の広告を報告し、「安心の全額返金保証と書いてあるが、初回限定商品のみが対象となっていたり、継続して使用していることが条件となっていたりして矛盾している」などと指摘した。

県と学校が連携して不当表示広告を調査し、処分にまでつなげる取り組みは全国でも珍しいという。

西村隆男名誉教授は「従来の消費者教育にみられるような被害防止への注意喚起を中心とした授業構成ではなく、世の中の不正義を生徒が見つけ出し、それが県の行政処分につながっていくという構成になっている。子どもたちの社会への参加意欲を高め、見抜く力を養うための優れた授業実践だ」と評価。県と学校の連携についても「こうした授業構成を実現するためには行政と学校が上手く連携する必要がある。実践できている都道府県は少ないのではないか」と指摘した。

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