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食品に過大な期待禁物 脱フードファディズムを 高橋久仁子さん

健康や美容を意識させる食品の広告やメディア情報があふれる中、食の情報を正しく理解するためのオンライン学習会が8月26日に開かれ、群馬大学名誉教授で食品の広告問題研究会を主宰する高橋久仁子さんが2時間にわたって講演した。高橋さんは現在の状況について、「栄養に過大な期待を持たせてしまっていることがフードファディズムを蔓延させている」と指摘。あふれている食の情報を、冷静になって検証することが重要だと呼びかけた。

埼玉消費者被害をなくす会主催のオンライン学習会で講演する高橋久仁子群馬大名誉教授(Zoom画面より)

学習会は広告表示の改善要請活動に取り組む適格消費者団体「埼玉消費者被害をなくす会」(池本誠司理事長)の主催。「食の情報、鵜呑みにして大丈夫?」をテーマにオンラインで開かれ、約80人が参加した。

高橋さんは「マスメディアや宣伝広告に惑わされない食生活を送るにはフードファディズムからの脱却が必要だ」と強調した。フードファディズムとは、食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じたりすること。健康効果をあおる食品が大流行する▽量を無視して一般化する▽食に対する期待や不安をあおる――の3つのタイプがあると指摘した。

具体例として示されたのがコラーゲン神話。コラーゲン商品には「飲むたびに、うるおう」「おいしくうるおう」などの記載が多くみられるが、表示の真意について企業調査したところ、「飲むとのどがうるおうという意味」との回答が返ってきたという。高橋さんは「確かに商品のどこにも“肌をうるおす”とは書かれていないが、コラーゲン神話が蔓延していると消費者は肌が潤うと勝手に解釈してしまう」と指摘した。

また、量を無視して一般化する事例として、「タマネギを食べると血糖値が下がる」という事例を紹介。タマネギには血糖値を低下させる物質が含まれるが、動物実験で効果が確認された量を体重50キロの人に当てはめると、50キロ分のタマネギに含まれる量だった。高橋さんは「健康食品の宣伝文言の行間を読んではいけない。読むべきは栄養成分表示だ」と指摘。「世の中にあふれている食の情報を冷静になって、そして一歩踏みとどまって、事実かどうか、ウソや過剰が混じっていないか考えてほしい」と呼びかけた。

高橋さんが提案するのは「そこそこの健康とほどほどの食生活」。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」をもとに穀類、豆、肉、魚、牛乳、卵、果物、油脂類を適度な量、野菜や海草、茸類を豊富に食べることをすすめた。

高橋さんは「健康の維持増進の3要素は運動、休養、栄養。しかし、運動しないツケ、休養しないツケを食べ物で補えるかのような宣伝がいっぱいある。栄養に過大な期待を持たせてしまっていることがフードファディズムを蔓延させることにつながっている」と指摘し、「健康的な食生活、理想的な健康管理を行っても防げない病気は多い。それを受け入れる社会であってほしい」と語った。

(本紙「ニッポン消費者新聞」9月1日号より転載)
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