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環境ホルモン対策求め 41団体が「子どもケミネット」設立

◎政策提言で新たな規制実現目指す 17人の有識者が専門知見をサポート

子どもの発達障害やアレルギー、ひいては少子化の原因の一つに有害化学物質の影響があると位置づけ、新たな規制の枠組みを国に求めていこうと41団体が集まり4月22日、「有害化学物質から子どもを守るネットワーク」を立ち上げた。活動期間を5年とし、最新知見に基づき国に政策提言していく。代表世話人に就いた中下裕子弁護士(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議代表理事)は「EUで環境ホルモン規制が始まるなど世界的な問題となっているが、日本では放置されたまま。未来の子ども達のために対策を求めていこう」と呼びかけた。

設立を宣言する中下裕子代表世話人(=右から2人目)。参加申込はダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議ホームページ参照を(4月22日、連合会館にて)

略称は「子どもケミネット」。各地グリーンコープや有害化学物質削減ネットワーク、日本消費者連盟など41団体が加盟し、団体会員数を集約すると100万人規模の運動体となる。11人の世話人会が運営を担い、代表世話人に中下裕子弁護士が就任。アドバイザーとして内分泌かく乱物質、神経科学、予防医学、法律、経済、社会など一七人の有識者も参加し、専門的なサポートを行う。

初年度は世話人会を月1回、国際市民セミナーを年4回、研究者による学習会を年3回開く方針。必要に応じて個別物質ごとにプロジェクトチームを設けて、政策提言をまとめる。啓発パンフレットの刊行も計画する。会費は無料で、賛同団体・個人を募集中。

中下代表は「生体のホルモンや神経伝達物質をかく乱するというのは新しい毒性であり、現在のリスク評価制度の枠組みでは規制の有効性がない状況だ。かつて、発がんの毒性が提起されてから規制に至るまでに50年かかった。子ども達のために一刻も早く対策を講じる必要がある」と説明。

世話人団体の一つ、グリーンコープ共同体として挨拶した篠原佳奈子さんは「20年以上前から環境ホルモン問題に取り組み、ビスフェノールAが溶出する缶詰の供給停止や塩ビ製おもちゃの取り扱い不可、紫外線吸収剤不使用化粧品の開発などを展開してきた。環境ホルモンの有害性を示す科学的根拠は世界共通。私たちは世界の研究成果から学び、それに基づく政策の実施を政府に強く求めていこう」と決意表明した。

設立を記念して、海外からメッセージも寄せられた。世界的ベストセラー『奪われし未来』の共著者、ピート・マイヤーズ博士は「世界保健機関は2012年に内分泌かく乱作用が世界的な公衆衛生上の脅威であると結論付け、EUは2020年に持続可能な化学物質戦略の重要な部分と位置付けたが、日本は約20年間、無視し続けた。設立をうれしく思うが、手遅れでないことを祈る」。食品容器包装フォーラム・マネージング・ディレクター兼チーフ・科学オフィサー、ジェーン・ムンケ博士は「内分泌かく乱化学物質の危険性を理解している私たちは他者に対して大きな責任を負っている。行動することが重要であり、取り組みが成功することを祈る」と寄せた。

(本紙「ニッポン消費者新聞」5月1日消費者月間特集号より転載)
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