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【英国】塩素処理 水道水やサラダはいいけど鶏肉がダメな理由

鶏肉

貿易協定の締結に向けて米国と交渉中の英国で、食の安全安心への懸念が高まっている。その一つが英国や欧州で禁止されていて、米国では許可されている塩素処理済み鶏肉の輸入問題。塩素処理自体は水道水やパック詰めサラダにも利用されている技術だが、消費者団体Which?は9月15日、鶏肉では禁止されている理由について解説する記事を掲載した。

Which?によると、葉物野菜は土壌からのサルモネラやノロウイルス、大腸菌に汚染されている可能性があり、塩素処理(フルーツ酸、水洗浄などの方法もある)で除去する必要がある。処理方法には加熱や冷凍などの方法もあるが、サラダには不向き。処理中の塩素濃度は厳しく監視され、処理後は洗浄される。政府機関の調査では、パック詰めサラダの塩素レベルは飲料水よりも低かったという。

一方、鶏肉。加工工程の最後に鶏肉を塩素洗浄するのは、食中毒を引き起こすカンピロバクター、サルモネラ菌、大腸菌などの殺菌が目的。細菌汚染と食中毒のリスクを最小限に抑えるための重要な処理だが、英国と欧州は1997年、鶏肉への塩素処理を禁止し、衛生管理をシステム全体で達成しようという考え方に移行したのだという。

そこには欧州ならではの動物福祉の観点が盛り込まれていて、鶏肉を生産・出荷するには鶏舎のスペースや日光、換気、清掃などに関する厳しい動物福祉と衛生基準を順守する必要がある。動物福祉により健康な鶏を生産することで、病気の蔓延や細菌汚染のリスクも低減できるという。

塩素処理した米国産鶏肉の細菌レベルが欧州産よりも低いということはなく、Which?は米消費者団体コンシューマー・リポートの調査結果を紹介。米国内で市販される鶏むね肉の97%からカンピロバクターやサルモネラ菌などが検出されたという。

Which?は鶏肉の塩素処理について、「塩素を使うこと自体を懸念しているわけではない。米国には動物福祉とシステム全体の衛生基準に関する規制がなく、塩素処理だけで済まそうとしていることに懸念を感じる」と理由を語った。同団体の調査によると、英国人の74%が塩素処理鶏肉、ホルモン処理牛肉、欧州で禁止された農薬を使った食品の輸入に反対しているという。

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