恒例・記者座談会 対応遅れるゲノム食品、廃プラ問題も焦点🔓

今年は消費者庁・消費者委員会が発足して10年。来年は国民生活センター創立50周年を迎える。ここ数年で、30、40、50、70周年などの節目を迎えた消費者団体も多い。節目には、立ち止まり、振り返り、そして、さらに前へ、という思いの発露が期待される。だが、消費者運動には劇的な変化は見られない。消費者行政はどうか。10年前、消費者庁は新たなステージの上で「消費者目線」という言葉をふんだんに使った。課長以上の幹部職員は消費者目線を学ぶために消費者団体や消費生活センターに研修に赴いた。規制改革が各施策に大きく反映された5年前には、2000年代の”失われた10年”の教訓を忘れたかのように企業の新たな不祥事が頻発した。2年前には、素材メーカー、自動車業界などの検査不正などが発覚し、その不正は消費者庁発足の、はるか以前から密かに実施されていたことが判明した。最近では悪質業者による消費者勧誘が巧妙・深刻化する一方で、被害救済策が圧倒的に遅れていることが問題視されるようになった。政治腐敗や官僚トップによる不祥事も相次いでいる。「消費者目線」はどこにいったのか。新年を迎えるにあたり恒例の記者座談会を催し、記者たちの声を拾った。

●暮らしの視点から評価を

記者座談会

新春恒例の本紙記者座談会。消費者庁10周年、食品衛生法改正、ゲノム、香害、廃プラ、自動運転など話題が尽きない

――司会 今年は消費者庁・消費者委員会の創立10周年。これまでを検証する年になる。今後へつなげる昨年の出来事で印象深かったことは何か。
――A あまり注目されなかったが、昨年は消費者基本法の前身となる消費者保護基本法の施行から50周年だった。「消費者行政50年」。歴史の検証は今年に持ち越された。
――司会 10周年の検証ではどんな論点を今後の課題として据えるべきか。
――B 大きくは、これまでの施策実行の成果を考えること。それをもとに将来へ先延ばされた積み残し課題の確認、その実現性と今後の方針などだ。
――C テーマごとに象徴的な個別案件の提示が欲しい。
――司会 個別案件を通した全体的検討が必要ということか。
――A 肝心なのは、この10年の消費者政策で、消費者の暮らしは良くなったのか、という検証だ。安全、取引、表示、物価の各分野にメスを入れることが必要だろう。
――司会 それを考える際の印象深い取材は?
――B 安全分野では子どもの事故、取引ではジャパンライフ事件、表示では遺伝子組み換え食品、物価では消費税率アップか。
――C マイクロプラスチックの人体・環境汚染、ケフィア事業振興会の預託取引被害、ゲノム操作食品の表示問題への取材、さらに、消費者庁が実施した「ステマ価格」の調査結果などが印象深い。消費者の知らない間に、容器を小さくして実質価格を高くする手法だ。このステマ価格の横行が問題視された。だから、ユニットプライス(単位価格表示)の国際規格を作ろうと呼びかける運動には注目した。
――A 注目の国際規格では「エシカル」に関するISO(国際標準化機構)の検討も同様だろう。「エシカル」と称しながらエシカルとは異なる企業行為が各国でまん延していることが背景だ。日本も同様だが。
――司会 各種法制度の実効性も検証課題となるのではないか。
――B 10年間の制定・運用の実態について個別法の課題が焦点になる。
――A ただ、さっきも言ったように、消費者の暮らしは良くなったのか、消費者の権利の実現や利益の増進はどうなのか、この視点を検証の基底に置くべきだろう。特に、消費者基本法に明記されている消費者の権利の中で、あまり重視されてこなかった「救済される権利」については、今後の新たな課題として検証されるべきではないか。
――司会 どういう意味か?
――C 被害の防止だけではなく救済されることが重要ということか。
――A そう思う。消費者政策で大切なことは、被害防止を入り口とすると、出口は、被害を受けた消費者が救済を主張し、それがきちんと実現される制度的保証があるかどうかだ。そのような仕組みが導入されていてもその実効性はあるか、仮に制度が使われていない場合、問題はどこにあるのか、それらを見極める視点が大事と思う。その意味で破綻したジャパンライフ被害者の救済活動は重要だ。
――司会 いくつかの方向性が出た。順に見てみたい。

●対応遅れるゲノム食品

――司会 食品問題から話してみたい。昨年も課題山積だったようだが。
――B 消費者庁を相手取った機能性表示食品の裁判提訴や、遺伝子組み換え食品の表示改正、続くゲノム操作食品の安全性と表示問題が相次いだ。大きな制度上の動きとしては15年ぶりの食品衛生法の改正。
――司会 まず、総括的な課題を持つ食品衛生法改正を考えたい。改正の特徴は?
――A ポイントは六つ。広域食中毒防止体制構築、健康被害情報報告制度、リコール情報届出制度、食品容器類のポジティブリスト化、事業者の許可制度見直しと登録制度導入、HACCP制度義務化などだ。施行は2021年6月までの政令で定める日。厚生労働省が政省令を検討中だが、緊急性を持つ食中毒対策などは今年中の導入をメドにしている。
――司会 どの改正項目も消費生活に密接な関連がありそうだが…(以下続く)

(本紙「ニッポン消費者新聞」1月1日新年特集号より転載)

 

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