減らそう食品ロス 受賞9社の取り組み紹介
- 2025/12/10
- 食品
コンシューマーワイド
食品ロス問題は持続可能な未来を目指す国際社会の課題になっている。SDGsは12番目の目標「つくる責任、つかう責任」で「2030年までに食品ロスの量を半分に減らす」ことをターゲットの1つに定める。日本政府も毎年10月を「食品ロス削減月間」とし、企業や自治体、国民に意識向上を呼び掛ける。「食品ロス削減の日」に当たる10月30日には東京都で開いた「食品ロス削減全国大会in千代田」で、削減活動に積極的な16の企業・団体を表彰した。このうち9社を取り上げ、それぞれの取り組みを紹介する。
■ドール(東京) もったいないバナナで再び命
産地フィリピンで皮に傷が付いたり、大きさが不ぞろいだったりして規格外品になったバナナを日本に輸入して有効活用する「もったいないバナナプロジェクト」を展開する。
2021年度にスタートし、24年度は2000トンの規格外品を青果としてスーパーで販売したり、バナナスイーツなどの加工品の原料として提供したりした。25年度は4000トンの取り扱いを目指す。
ドールによると、生産過程で年2万㌧を超す規格外バナナが生まれる。見た目は見劣りするが、「味も品質も問題ない」と、フルーツロス削減の観点からプロジェクトに乗り出した。開始当初は規格外品にネガティブな印象を抱いた消費者の意識も変わり、今では付加価値の1つと前向きに評価する人が増えている。
■G-Place(大阪) タベスケで期限迫る食品救う
賞味・消費期限の迫った食品をお得に提供するアプリ「タベスケ」を開発し、自治体主導の食品ロス対策事業を進めている。
アプリの運用主体は自治体で、消費者が登録すると、地元の小売店や飲食店などが期限の近づいた食品を売りに出す画面が表れ、目当ての食品を選んで購入予約する。
食品はパンや菓子、生鮮品など。価格は主に数十%引きでゼロ円や1円の格安品もある。購入予約者は販売元の店に出向いて食品を受け取り、代金を支払う。
G-Placeは環境分野で全国の自治体の事業支援をし、支援先の兵庫県姫路市から食品ロス対策事業の提案を求められ、タベスケを開発した。2021年に同市を皮切りに始め、その輪は全国29自治体、協力店900軒に広がっている。
■ネッスー(東京) ふるさと納税で子ども支援
ふるさと納税を通じて農産物などを子ども食堂などに無償提供する「こどもふるさと便」サービスを展開する。
北海道旭川市や神奈川県三浦市など6自治体と提携し、自治体がふるさと納税で得た寄付金で食材を買い取り、支給する。
旭川市ではコメ、三浦市ではスイカやダイコンを扱う。規格外品もあり、食品ロス対策も兼ねる。活動は2022年に始まり、5000万円相当の食材を300団体に届けた。
寄付者はふるさと便サイトでふるさと納税として寄付。返礼品が届く上、食品ロス対策と児童支援に貢献できる。農産物提供元は地元生産者で食材供給で収入を得られ、経済振興も図る。
提携先自治体は26年度で20前後に増え、支給品もランドセルなどにも広げる。
■カーブスジャパン(東京) 持ち寄り食品で地域支える
全国に2000店を展開する女性限定フィットネス施設に通う会員が賞味期限の迫った食品を持ち寄り、地域の児童養護施設や母子生活支援施設などに寄付するフードドライブ活動をしている。
活動は2007年に始め、年にほぼ1回のペースで実施した。計221万人の会員が協力し、計3051トンの食品を供給している。提供先からは「地域の皆さんに支えられているのを実感し、励みになる」と謝意が寄せられている。
食品は賞味期限が近づいたと言っても、期限までに余裕のある食品に絞り、安全・安心に配慮する。
活動開始の07年は日本にまだ食品ロスという言葉もなかった時代。米国で行われていたフードドライブ活動に着想を得て、日本に根差すスタイルで取り組んでいる。
■サンハウス食品(愛知) 印字ズレのレトルトを活用
ハウス食品のグループ企業として同社のカレーなどのレトルト食品やデザートベースを作っている。
容器の箱やパウチに賞味期限の数字などをプリンターで印字する際、文字が欠けたり、斜めになったりして商品化できない品が生じる場合がある。以前は廃棄していたが、中身には問題がなく、「有効活用できないか」とフードバンク団体を通じ、子ども食堂の運営団体などに無償提供している。
取り組みは2016年にスタートし、これまで112万個を供給した。カレーやデザートは子どもの好物。提供先から喜ばれ、感謝の寄せ書きが届いている。
サンハウス食品は「まだ食べられる食品で今できる支援」を目指し、レトルトに思いを乗せた社会貢献活動を推進する。
■鈴鹿サーキット(三重) F-1余剰食材を子どもへ
カーレース場、鈴鹿サーキットで開かれるF‐1の日本グランプリ(GP)で、レーサーやスタッフに提供される食事で余った食材を子ども食堂などの児童支援施設に寄付している。
F-1はチームごとにシェフや食材調達係がいて、自前で調理し、食事提供する。ことしの日本GPは4月に開かれ、生鮮品や冷凍食品、飲料、小麦粉、調味料など7.8トンの食材が余剰となった。これを地元のフードバンク団体が一括して引き取って仕分けし、団体を通じて支援団体に給付した。
活動は22年、持続可能な循環型社会の構築と児童支援を目的にスタートした。3回目の昨年は2.8トンを三重県内4市のフードバンク14団体に提供した。ことしから冷凍食品の保管、運送が可能になり、取扱量が増えた。
■八芳園(東京) 落果をスイーツに再生
悪天候などで落下して出荷されない果実を加工して商品化につなげている。
2020年の東京五輪・パラリンピックに関連し、自治体のおもてなしサポートに社として参加した。その中で社員が山梨県のモモ農園を視察に訪れた際、畑の片隅に積まれた落果の山が目に飛び込んできた。
売り物にならず、そのまま土に帰る運命。北海道や福島、徳島両県でも農水産物が同じ理由で廃棄される実情を知り、行き場を失った農水産物に再び息を吹き込む活動を始めた。
社員が現地に出向いて原料を確保。シェフがデザートピザやフルーツバターなどに加工し、現地や東京でのイベントなどで提供している。福島県では年100~150キロのイチゴの落果を加工品として再生させた。
■カウシェ(東京) ゲームで作物育て現物ゲット
アプリで作物を育てると、その作物の現物がもらえる「カウシェファーム」を進める。
作物はタマネギやトマト、コメ、ナッツ、お茶、コーヒーの6種。アプリに登録し、キャラクター姿の目当ての作物に水と肥料を与えて栽培し、育ち切ると現物が無料で届く。タマネギは市場に出回らない規格外品で食品ロス対策にもなる。
カウシェファームは仮想のショッピングモールを巡って安く買い物できるアプリ「カウシェ」に組み込まれている。作物の生育期間は主に3週間~2カ月間でカウシェで買い物すると特典で期間が短くなる。
カウシェファームは「ゲーム感覚で食品ロス問題を考えよう」と2023年に始まった。カウシェ全体では500万インストールを数え、ユーザーの輪が広がる。
■アルファコインロッカーシステム(神奈川) 自販機で売れ残りパン販売
駅構内にロッカー型自動販売機を設け、賞味期限の迫ったパンを無人販売する陳列ボックスのレンタルサービスを展開している。
2024年に横浜市営地下鉄関内駅に1号機を設置したのを皮切りに同市内の駅を中心に14台を置く。レンタルする相手は地元パン店で、商品を袋詰めにしてロッカーに収める。
価格はお値打ちで消費者からは「お得だし、パン屋さんの営業時間後に買える」と好評だ。パン店も「商品を廃棄せずに済む」と喜ぶ。
サービスは新型コロナウイルス感染拡大で客足の遠のいたパン店を支援しようと始めた。自販機は卵や野菜の無人販売機を参考に国内初のコインロッカーメーカーの技術を生かして開発した。これまで16トンの食品ロス削減につなげている。

























