欧州でITインフラ利用料の議論再び 「ネット中立性」危ぶむ声

ドイツの消費者団体vzbvの報告によると、デジタルインフラ利用料をコンテンツ事業者に課す案が欧州委員会で議論される可能性が高まっている。電気通信事業者の強い働きかけがあったといい、今秋にも議論に向けた草案が提出される見通し。vzbvは「利用料の義務化はネットの中立性、自由競争、オープンで自由なインターネットを危うくする」として早くも反対する姿勢を明らかにした。

デジタルインフラ利用料とは、電気通信事業者が整備・維持するITネットワーク網のコストの一部をコンテンツ事業者にも負担してもらおうという制度。コンテンツの利用が活発になるほどネットワークトラフィックがひっ迫するため、電気通信事業者はその都度、設備投資に追われていた。デジタルインフラ利用料は一見、高速道路の利用料金制度と同じ構図に見えるが、「ネットの中立性」や「自由競争ルール」、「ベストエフォート」などの原理原則とも深く絡み合い、いまも各国で導入の是非を巡る議論が続いている。

vzvbは「コンテンツ事業者への利用料義務化が実現してしまうと、データが平等に扱われなくなり、ネットの中立性が間接的に弱まる可能性がある」と危惧し、「自由競争、ネットワークの中立性、ひいては消費者の利益に与える負の影響は、電気通信事業者のメリットを上回る」と反対を表明した。同団体によると、デジタルインフラ利用料を世界で唯一導入している韓国では、コンテンツ事業者の市場撤退、消費者の選択肢の減少、ストリーミングの品質制限といった弊害が確認されているという。

欧州では10年前の2012年にも利用料の導入を巡る議論が行われたが、欧州委員会と欧州電子通信規制機関 (BEREC)は当時、独占のリスクが高まるとして反対する立場を明確にしていた。

vzbvは欧州委員会に対し、消費者団体、事業者、擁護団体などが参加する公開協議の実施を要請、「影響を受けるすべての関係者から意見を聴くべきだ」と呼びかけている。

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