そうざい半製品、加熱不足に注意 食中毒リスク 都が実態調査

2016年に「そうざい半製品」の冷凍メンチカツを原因とした腸管出血性大腸菌О157による集団食中毒が首都圏を中心に広域に発生したことを受け、東京都健康安全研究センターが冷凍食品を含む凍結流通品の実態調査を行っていたことがわかった。

調査では、記載された方法で調理しても、中心温度が75℃に達せず、十分な加熱殺菌が行われない場合があることが判明。また、家庭の調理実態を調べたところ、フライパンを用いて少量の油で揚げている人が多く、加熱不足を招きやすいこともわかった。調査結果を受けて、同センターは業界団体や食品メーカーに対し、調理方法に関する表示の検証や分かりやすい情報提供などをすでに要請。消費者への注意喚起については近く、都の食品安全情報サイト「食品衛生の窓」やSNSを通じて広く発信する方針だ。

そうざい半製品とは食べる直前に油で揚げたり炒めたりして完成させるそうざい加工食品のことで、冷凍タイプの製品としてはとんかつ、コロッケ、餃子などがある。冷凍食品には食品衛生法や食品表示法によって規格や表示基準が整備されているが、そうざい半製品には法的な基準がないのが特徴。16年に起きた集団食中毒は、そうざい半製品の冷凍メンチカツを、消費者が十分に加熱調理しなかったことが原因とみられている。

そこで、都健康安全研究センターは17年~19年、冷凍食品とそうざい半製品の実態調査を実施。48検体を対象に、記載された油温・加熱時間で調理したところ、加熱中に中心温度が75℃に達したのは16検体(33%)で、余熱で到達したのは16検体(33%)、残る16検体(33%)は余熱を含めても到達しなかった。

また、都職員91人を対象に家庭調理の実態調査を実施。その結果、調理方法通りに揚げている人は18%にとどまり、自分の感覚で揚げている人が42%と最も多かった。さらに、天ぷら鍋を用いずにフライパンを使っている人が56%いたほか、使用する油の量は揚げ物が浸かる3~4センチ程度が40%、同時に揚げる個数は調理器具の半分程度との回答が51%と最も多かった。この揚げ方(フライパンで少量の油、調理器具の半分程度の個数を同時調理)で14検体を調理したところ、9検体(64%)が中心温度75℃に到達しなかった。

微生物検査では冷凍食品、そうざい半製品のどちらからもサルモネラやリステリア・モノサイトゲネスといった食中毒菌が検出されており、同センターは食肉を使った冷凍そうざい半製品などについて、加熱不足による食中毒リスクについて注意を呼びかける方針。表面の揚げ色で判断せず、中心部の色の変化を確認することなどを周知していく。

(本紙「ニッポン消費者新聞」10月1日号より転載)

関連記事

消費者運動年鑑2023

ニッポン消費者新聞最新号発行しました

新着記事

  1. 松永和紀さん
    ◎大阪消団連主催の講演会で 「今回の制度改正では再発防げない」と指摘 食品安全委員会委員を務める科c
  2. オーストラリア競争・消費者委員会
    オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は9月23日、スーパー大手のウールワースとコールズの豪州c
  3. キッズデザイン賞
    ◎消費者担当大臣賞は「キッズフリマ」が受賞 子どもの視点を持つ優れた製品や施設、取り組みなどを表彰c
  4. 東京都商品等安全対策協議会
    水辺のレジャー中の水難事故が毎年発生していることを受け、東京都は9月19日、都商品等安全対策協議会(c
  5. コンシューマーリポート
    入浴中の赤ちゃんの死亡事故が発生している「乳児用首浮き輪」を巡り、米国消費者製品安全委員会(CPSCc

記事カテゴリー

トレンドニュース

  1. 全葬連石井時明会長

    2020-1-22

    登録制度導入も視野に 葬祭業めぐり3省庁が情報交換

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の石井時明会長は1月21日、同連合会と全日本葬祭業政治連盟の合同c
  2. 全日本葬祭業協同組合連合会

    2020-1-9

    国際葬儀連盟、横浜で6月に世界大会 18年ぶりの日本開催

    今年6月、横浜で世界の葬儀関連事業者が集う世界大会が開催される。主催する「FIAT-IFTA」(国際c
  3. 葬儀事前相談員資格認定試験

    2019-11-20

    葬儀の事前相談員資格認定試験を実施 全葬連

    経済産業大臣認可の「全日本葬祭業協同組合連合会」(全葬連、石井時明会長)は11月18日と19日の両日c
  4. チーズフェスタ2019

    2019-11-12

    チーズフェスタに6千人超、「チー1グランプリ」も決定

    チーズ普及協議会と日本輸入チーズ普及協会は11月10日と11日の両日、東京渋谷区・恵比寿の「エビススc
  5. 全葬連第44回通常総会懇親会

    2019-5-22

    来年の国際葬儀連盟世界大会への準備推進 全葬連

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連、石井時明会長)は5月21日、第44回定期総会を都内で開き、来年6c
ページ上部へ戻る