豪州で植物由来の代替食品ブーム 消費者団体がその背景を考察

オーストラリアで植物由来の代替食品が台頭している。代替肉にとどまらず、ラザニア、ヨーグルト、コンデンスミルク、チーズなどスーパーの陳列棚には250以上もの製品が並び、売上も直近の2年間で1.5倍に増加。数年前の「植物由来食品は斬新なコンセプトの食品で、ビーガンなど少数の人のためのもの」とのイメージを覆し、市場が急成長しているという。なぜオーストラリア人は植物由来食品を選ぶのか。豪州の消費者団体CHOICEがその背景に迫った。

CHOICEの調査(今年3月実施)によると、オーストラリア人の大多数(79%)は肉も野菜も食べる雑食タイプ。次いで9%の人は「準菜食主義」で、野菜中心の食事をするが、時々肉や魚を食べる。さらに3%の人は魚は食べるが肉は食べない「ペスカタリアニズム」。そして5%が「菜食主義者」、2%が「完全菜食主義者」だという。

植物由来食品への移行が始まったのはかなり最近のことだといい、ビーガンもしくはベジタリアンの半数以上は食事療法の開始から5年未満の人たち。さらに、肉を食べているオーストラリア人の5人に1人が意識的に肉の摂取量を減らしていることがアデレード大学の昨年の調査でわかった。

肉を食べない、もしくは肉の摂取量を減らしたいという最大の動機はやはり「健康」。CHOICEの全国調査によると、以下、「環境」、「動物福祉」、「値段」、「植物由来食品の種類の多さ」と続いた。ほぼ半数(46%)の人は「ビーガン」「植物ベース」と表示された加工食品に対し、健康的なイメージを持っていることも判明した。

独立系シンクタンクのフードフロンティアが実際に通常の加工肉(ハンバーグやソーセージなど)と同種の植物由来代替肉の栄養価を比較したところ、植物由来の代替肉は全体的に栄養バランスが良い傾向があり、加工肉よりも栄養的に同等もしくは優れていることがわかった。食物繊維が多く、飽和脂肪が少ない傾向があり、研究者は「肉の量を減らしたいが、バーベキューでハンバーグをどうしても食べたいというオーストラリア人にとって植物由来の代替肉は健康的な選択肢となりえる」と指摘する。

ただし、豪政府は食事ガイドラインで適量の肉や乳製品の摂取を勧めている。肉はタンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB12、必須脂肪酸の供給源であり、牛乳やヨーグルト、チーズはカルシウム、たんぱく質、ヨウ素、ビタミンDを豊富に含む。これらの栄養素のいくつかは菜食・完全菜食の食事から得ることが難しく、CHOICEは「植物ベースの食事を始める時は認定栄養士や医療専門家に指導を仰いでほしい」と呼びかけている。

健康志向を背景に普及が進む植物由来の代替食品だが、さらなる成長のカギを握るのは「価格」。通常製品よりも価格が高く設定されることが多く、例えば通常のネスレ「ミロ」は100グラム当たり1.52豪ドルだが、植物由来のミロは100グラム1.77豪ドル。植物由来代替食品が高価な理由として、CHOICEは▽風味や口当たりの良さを出すために独自の材料が必要な場合があり、それらの材料が通常のものよりも高価な場合があること▽様々な処理や設備が必要なこと▽まだ市場規模が小さく効率的でないこと▽サプライチェーンと流通に余分なコストがかかること――などをあげている。

関連記事

消費者運動年鑑2023

ニッポン消費者新聞最新号発行しました

新着記事

  1. 豪州消費者団体Choice
    住宅ローンや家賃に関する苦情が増加しているのは銀行が苦境に立たされている人を十分支援していないからだc
  2. 鶏肉
    日本政策金融公庫が実施した畜産物の購入に関する消費者動向調査によると、食肉と牛乳について、およそ6割c
  3. コンシューマーリポート
    4月22日のアースデイを前に、米国の消費者団体コンシューマー・リポートは気候変動が消費者の財布に与えc
  4. 警察庁
    警察庁がまとめた生活経済事犯の検挙状況によると、2023年に全国の警察が摘発した特定商取引等事犯は前c
  5. 電話相談
    埼玉弁護士会と埼玉司法書士会は4月20日(土)と21日(日)に電話相談「敷金(賃貸住宅)トラブル11c

記事カテゴリー

トレンドニュース

  1. 全葬連石井時明会長

    2020-1-22

    登録制度導入も視野に 葬祭業めぐり3省庁が情報交換

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の石井時明会長は1月21日、同連合会と全日本葬祭業政治連盟の合同c
  2. 全日本葬祭業協同組合連合会

    2020-1-9

    国際葬儀連盟、横浜で6月に世界大会 18年ぶりの日本開催

    今年6月、横浜で世界の葬儀関連事業者が集う世界大会が開催される。主催する「FIAT-IFTA」(国際c
  3. 葬儀事前相談員資格認定試験

    2019-11-20

    葬儀の事前相談員資格認定試験を実施 全葬連

    経済産業大臣認可の「全日本葬祭業協同組合連合会」(全葬連、石井時明会長)は11月18日と19日の両日c
  4. チーズフェスタ2019

    2019-11-12

    チーズフェスタに6千人超、「チー1グランプリ」も決定

    チーズ普及協議会と日本輸入チーズ普及協会は11月10日と11日の両日、東京渋谷区・恵比寿の「エビススc
  5. 全葬連第44回通常総会懇親会

    2019-5-22

    来年の国際葬儀連盟世界大会への準備推進 全葬連

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連、石井時明会長)は5月21日、第44回定期総会を都内で開き、来年6c
ページ上部へ戻る