健康食品にも副作用被害救済制度を 主婦連学習会で問題提起

薬害防止活動に尽力する薬剤師の藤竿伊知郎さんが11月24日、主婦連合会主催の学習会で講演し、健康食品による健康被害が発生している現状を踏まえ、「国が機能性表示食品などの制度を作るのであれば、医薬品と同様に副作用被害救済制度を作るべきだ」と問題提起した。実現は相当困難との認識を示したが、「売り逃げを許さないことが企業姿勢の変化につながる」と語った。

主婦連サプリメント学習会

講師の藤竿伊知郎さんと主婦連・河村真紀子会長。新商品と新たな広告が次々と登場する中、消費者が節度を保つのは難しいと指摘する(主婦会館プラザエフ・主婦連会議室にて)

この学習会は主婦連社会部・食料部の主催。会場とオンライン配信で開かれ、約30人が参加した。講師の藤竿さんは薬剤師の立場からサプリメントの問題点を示し、消費者がとるべき自衛策を説いた。

藤竿さんによると、健康食品の歴史は意外と浅く、1990年代後半から成長し始め、2000年代以降に加速した「21世紀の新しい食品」。海外製ダイエット製品での死亡事件や情報番組での捏造事件などで一時停滞したものの、近年は機能性表示食品が急成中で市場拡大が続く。

サプリメントブームを作り出しているのが相次ぐ規制緩和。無承認無許可医薬品として取り締まりの対象となっていたが、95年の閣議決定「規制緩和推進計画について」、その後のビタミン・ハーブ・ミネラルの相次ぐ剤型規制緩和、99年のドリンク剤販売規制緩和により開放されていった。とりわけ01年の医薬局長通知「医薬品の範囲に関する基準の改正について」の影響が大きく、藤竿さんは「医薬品成分だったグルコサミンが食品添加物(増粘剤)として食品に加えてもいいということになり、食品添加物基準を順次切り替えながら健康食品が増えていった」と指摘した。

薬剤師の現場でも患者から摂取中の健康食品について聞かれることが多いといい、藤竿さんは「効果は期待できないと正論を言ってもまずは反発される」とし、消費者の自衛策として「医師や薬剤師と一緒に効果を評価し、副作用が出たら報告してほしい」と強調。2週間以内に体調が悪くなれば摂取を止め、2カ月使って効果を感じなければ止めるよう勧めた。

藤竿さんは悲惨な薬害の歴史について触れ、医薬品と同様に副作用被害救済制度を作るべきだと指摘。実現は非常に難しいとする一方で、「要求しないと始まらない。誰も責任を取らず売り逃げを許していいわけではなく、企業が責任を持つことになれば姿勢も変わるはずだ」と強調した。

主婦連は健康食品について「お勧めはしない」という姿勢をとる。佐野真理子参与は「被害の因果関係の証明が難しいが、救済制度はずっと望んできた。高いお金を払って購入し、被害に遭っても自己責任で済まされるのはおかしい」と指摘。河村真紀子会長は「普段の食生活で十分に健康を維持できるはずだが、(消費者に寄り添った)明確な回答が難しい。もう少し説得力のある発信の仕方を身につけたい」とコメントした。

関連記事

消費者運動年鑑2023

ニッポン消費者新聞最新号発行しました

新着記事

  1. 米連邦取引委員会
    米連邦取引委員会(FTC)は11月5日、金融アプリを手がけるDaveが誤解を招く宣伝を行ったうえ、手c
  2. 小林製薬紅麹サプリ
    小林製薬の「紅麹サプリ事故」の被害救済をめざし10月9日、「紅麹サプリ被害救済弁護団」が発足した。専c
  3. 消費者安全調査委員会中川丈久委員長
    消費者安全調査委員会委員長・神戸大学大学院法学研究科教授、中川丈久さん ◎委員連携重視、新タイプのc
  4. 日弁連消費者問題対策委員会シンポジウム
    ◎「司令塔機能」に期待外れの意見も 「消費者マインド持って」と要求 消費者庁・消費者委員会が発足しc
  5. 香港消費者委員会
    香港消費者委員会は10月24日、タイ消費者委員会と越境消費者トラブルに関する覚書を結んだと発表した。c

記事カテゴリー

トレンドニュース

  1. 全葬連石井時明会長

    2020-1-22

    登録制度導入も視野に 葬祭業めぐり3省庁が情報交換

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の石井時明会長は1月21日、同連合会と全日本葬祭業政治連盟の合同c
  2. 全日本葬祭業協同組合連合会

    2020-1-9

    国際葬儀連盟、横浜で6月に世界大会 18年ぶりの日本開催

    今年6月、横浜で世界の葬儀関連事業者が集う世界大会が開催される。主催する「FIAT-IFTA」(国際c
  3. 葬儀事前相談員資格認定試験

    2019-11-20

    葬儀の事前相談員資格認定試験を実施 全葬連

    経済産業大臣認可の「全日本葬祭業協同組合連合会」(全葬連、石井時明会長)は11月18日と19日の両日c
  4. チーズフェスタ2019

    2019-11-12

    チーズフェスタに6千人超、「チー1グランプリ」も決定

    チーズ普及協議会と日本輸入チーズ普及協会は11月10日と11日の両日、東京渋谷区・恵比寿の「エビススc
  5. 全葬連第44回通常総会懇親会

    2019-5-22

    来年の国際葬儀連盟世界大会への準備推進 全葬連

    全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連、石井時明会長)は5月21日、第44回定期総会を都内で開き、来年6c
ページ上部へ戻る