【豪州】投資アプリに注意、頻繁な取引促す設計 当局も注視へ

豪州の消費者団体CHOICEは11月16日、投資アプリのマーケティング戦略に注意を呼びかけた。宝くじやギャンブルのアプリと同様、投資にのめり込むような戦術が繰り広げられており、安易な取引によって大きな損失を被る危険性があると指摘した。同国では新型コロナの感染拡大が始まった昨年、若者が続々とアプリでのトレードを開始しており、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)も今年初め、損失リスクに対する強い警告を発していた。

CHOICEなどによると、昨年、取引が実行された約167万口座のうち約70万口座が新規開設されたもの。また、調査会社によると、昨年、新たに投資を始めた人の49%が25~39歳で、18%が25歳未満だった。

オーストラリア市場には約145の投資関連アプリがあり、株式のほか為替、暗号資産(仮想通貨)、商品先物、不動産、クラウドファンディングなど多岐にわたる。特にリスクが高いとされる差金決済取引(CFD)では、「投資家の多くが取引で損を出している」(ASIC)状況だという。

ASICは投資アプリについて▽クリック数を最小化して投資しやすくしている▽頻繁に取引させるような機能やツール、サービス(自動通知サービスなど)が次々と提供される――などの注意ポイントを指摘。また、利用者を増やすための戦術として▽取引手数料無料化などのキャンペーンの実施▽有名人の推薦▽友人紹介でのポイント付与――などが展開されていると説明した。

投資アプリを巡っては今年6月、米カーネギー大学の研究者が論文を発表し、「投資家の本能に基づいて取引するよう促し、合理性を低下させるであろう設計になっている」と指摘。手数料無料化などのサービス提供が「投資アプリと宝くじ・ギャンブルアプリの境界線を曖昧にする可能性がある」と警告を発していた。

ASICは投資アプリの台頭と積極的なマーケティング戦略を注視していく方針。CHOICEに対し「投資、投機、ギャンブルの間に境界線を引くことは学術的にも難しく複雑な分野だが、金融事業者は公立公平で正直なサービス提供をすべきだ。アプリの機能や設計などを調べ、投資家に害を及ぼすかどうかを調べる必要がある」と回答。投資を検討する初心者に向けて「過度にリスクを取ったり、頻繁に取引したりすると投資のタイミングを誤り、損失を出す可能性が高い」と警告した。

CHOICEは「投資アプリを利用する際は投資資金と取引頻度に制限を設けて、アプリの自動通知をオフにすることをおすすめする」とアドバイスし、投資がやめられずキャンブル化していると感じる場合は専門の依存症サポートを受けるよう呼びかけた。

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