【豪州】なりすましSMS詐欺対策で「送信者ID登録制度」開始
- 2026/7/15
- くらし
オーストラリア政府は7月1日、ショートメッセージ(SMS)を悪用したなりすまし詐欺を減らすため、企業や行政機関に「送信者ID(送信者名)」への事前登録を求める新たな制度を開始した。これまで詐欺グループは、税務当局や郵便公社など信頼される組織の名称を偽って送信者名に表示させ、正規のメッセージと同じスレッドに紛れ込ませる手口で消費者をだましてきた。
新制度では、通信会社に送信者IDを登録していない企業・行政機関・団体からのメッセージはすべて「未検証(unverified)」と表示され、他の未検証メッセージと同じスレッドにまとめられる。通信事業者に未検証メッセージにラベルを付ける責任を負わせ、遵守しない場合は最大25万豪ドルの罰金を科す。ただし、制度の対象は「ブランド名付きSMS・MMS」のみで、通常の電話番号やメッセージアプリからの詐欺は引き続き規制対象外となる。
オーストラリア通信メディア庁(ACMA)によると、SMS詐欺による昨年の被害額は約1800万豪ドルに上る。コンサル大手デロイトも、今回の制度が今後10年間で消費者と企業に合計9620万豪ドルの純便益をもたらすと試算している。2022年3月に同様の制度を先行導入したシンガポールでは、導入前の半年間と比較し、SMS詐欺が64%減少したという。
ACMAのネリダ・オロックリン長官は、「未検証」表示のメッセージについて、まだ登録を済ませていない正規の企業からの場合もあれば詐欺の可能性もあるとした上で、リンクをクリックしたり個人情報を提供したりする前に立ち止まって考えるよう呼びかけている。
一方、消費者団体は詐欺対策の重要な第一歩としつつ、慎重な評価も出ている。消費者擁護団体のオーストラリア通信消費者行動ネットワーク(ACCAN)のキャロル・ベネット代表は、今回の制度ですべての詐欺を防げるわけではなく、制度自体を知らない企業も多いと指摘。実際に、消費者団体CHOICEの職員が受信したビクトリア州政府機関からの正規メッセージが「未検証」と表示された事例が確認されている。さらにベネット氏は「違反した通信会社への厳格な執行こそが鍵になる」とも述べている。
また、今回の制度は銀行、デジタルプラットフォーム、通信会社に詐欺対策と消費者保護を義務付ける「詐欺防止フレームワーク」に先駆けて導入されたもの。フレームワークの全面施行は2027年3月まで延期された。消費者団体の消費者行動法センター(CALC)のステファニー・トンキン代表は「施行が遅れる間に20億豪ドルもの被害が発生するおそれがある。この延期はとても容認できるものではない」と指摘。業界側が導入を意図的に遅らせているとの見方も示した。
このフレームワークについて、ACCANのベネット代表は被害者への最低補償額(現行案3000豪ドル)の引き上げや救済を受ける被害者の負担軽減などの改善を求めている。「消費者は詐欺に遭うだけでなく、自分が詐欺に遭ったことを証明しなければならないという二重の打撃を受ける。これは特に最も弱い立場にある人々にとって困難だ」とし、膨大な利益を生み出すプラットフォームに責任を負わせる必要があると訴えた。






















