米国農務省研究機関の移転問題 職員の大半が退職する事態に

米国農務省(USDA)の2つの研究機関が、秋にもワシントンDCからカンザスシティへと移転する問題で、転勤対象となる職員の3分の2が退職する意向であることがわかった。移転に反対してきた非営利団体や有識者、農業関係者らは「我々が最も恐れていた人材流出が現実のものとなった。研究機関の崩壊につながる」などと指摘。科学者で作る非営利団体「憂慮する科学者同盟」は5月13日、移転場所の決定プロセスに関する情報開示をトランプ政権に求めたことを明らかにした。

移転するのは経済調査局(ERS)と国立食品農業研究所(NIFA)。2018年8月にソニー・パーデュー農務長官がワシントンDCから900マイル(約1448キロメートル)離れたカンザスシティへの移転する計画を発表し、昨年6月に正式決定となった。今年9月30日までに決行される予定。人件費や家賃などのコスト削減が主な理由で、15年間で約3億ドルの節約につながるとしている。

移転にはUSDA職員をはじめ民主党議員、有識者、科学者、農業関係者、非営利団体などがこぞって反対を表明。人員削減による機能低下や首都にある関係機関との寸断などを理由にあげていた。

報道などによると、異動対象となっていたUSDA職員の3分の2が辞退し、退職する意向。移転計画の発表以降、すでに多くの優秀な人材が流出しており、組織の空洞化に歯止めがかからない状況だという。経済調査局は食料・農業関係の統計を公表しており、その指標は官民で活用されている。一方、国立食品農業研究所は農作物の開発支援などを行い、大学研究を支える存在。2つの研究機関の移転は、トランプ政権下で進められている科学軽視政策の一環とみられている。

憂慮する科学者同盟によると、移転先のオフィスビルには共和党支援者の企業が共同所有者として名を連ねているといい、トランプ政権に対し、移転場所の決定プロセスに関する情報開示を要求。「移転計画は何百人もの科学者を辞任に追い込み、USDAの政策立案能力を大幅に低下させた。移転理由を明らかにし、誰が利得を得るのかを浮き彫りにしたい」としている。

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