【シリーズSDGs】手のひらの中に安心感 健康サロン(東京)
- 2026/4/11
- くらし
シリーズSDGs
〈調剤薬局で薬を出してもらうまでの待ち時間がなくなって良かった〉
健康サロンの社長坂井義尚(56)は手元に届いたメッセージに目を落とし、確信を得た。
メッセージは同社の開発した薬局DXアプリ「あなたの薬局」を利用した消費者から寄せられた。
あなたの薬局は電子版お薬手帳の一部と言える。医療機関から出された薬の処方箋をスマートフォンのカメラで撮り、画像をLINEで薬局に送る。それを受けて薬剤師が薬をそろえ、患者が薬局に着くころには薬は用意されていて、待ち時間ゼロで受け取れる。
〈薬局の待ち時間はどうしてこんなに長いのだろう〉
坂井もまた、多数の患者と同じ疑問を抱いていた。そんな思いからあなたの薬局の開発に乗り出し、2025年に製品化された。
あなたの薬局は、マイナポータルAPIを通じ、患者の同意の下、診療情報を取得し、法令やガイドラインに沿って適切に管理している。服薬指導の質向上を目的にAIを活用した分析も行っている。
AIは「患者に今処方された薬」が他の医療機関から先に出されている別の薬と飲み合わせが悪く、副作用を起こす可能性がないかどうかを調べる。「リスクあり」と判断したら、LINEを通じて自動で患者に注意を呼び掛けるメッセージを送信する。処方された薬が既に飲んでいる薬と重複している場合も、通知メッセージが届く。
メッセージ情報は薬局にも共有され、薬局が医療機関に情報提供し、対処を働き掛ける。
〈自分の健康状態に薬局の目が届いていることを実感できる〉
薬局への信頼感が深まった気持ちを伝える利用者のメッセージも届く。
薬局はこれまで医療機関の処方する薬をそのまま渡す「門前薬局」にとどまっていた。医療機関も他の医療機関の出す薬の情報は持たず、飲み合わせの悪さによる副作用や薬の重複のリスクが避けられないでいた。
厚生労働省は薬機法を改正し、20年、薬局が患者に「薬を渡す時」だけでなく、「薬を飲んでいる期間中」も副作用の有無や飲み忘れなどの服用状況をチェックし、患者に助言する「フォローアップ」を薬局に義務付けた。「門前薬局」から「かかりつけ薬局」への転換である。
フォローアップの義務化は患者には朗報となったが、薬局には想像を上回る負担増となった。
「フォローアップは薬剤師が電話対応しているが、つながらない時も多く、相手が高齢者の場合、説明に長時間を要する」「フォローアップに時間が割かれ、日常業務に差し障りが出ている」
坂井の耳にも窮状を訴える現場の声が届く。
〈フォローアップを自動化できないか〉
労働過多で疲弊する薬剤師の苦境があなたの薬局の開発を加速させた。
あなたの薬局の登録薬局は全国で1000軒を超す。今夏にはバージョンアップ版が全国1万軒、来年には2万軒を見込む。
あなたの薬局の登録はアプリのQRコードを読み取り、LINEの友だち追加をすれば済む。
「体調に変化はありませんか?」「薬の飲み忘れはありませんか?」
薬の処方を受けた患者のLINEには健康状態を確かめるメッセージが届き、患者も都合のいい時間に返信できる。
薬局からのメッセージのバリエーションは30万種に上り、患者の状況に合わせたきめ細やかなアドバイスを送る。
あなたの薬局を取り入れた薬局は、フォローアップをAIに任せたことで薬剤師に時間のゆとりが生まれた。
〈空いた時間は来局した患者と対面で相談に乗ることができ、患者に寄り添うことができるようになった〉
坂井には、薬局本来の仕事に専念できる充実感を味わう薬剤師の謝意も寄せられている。
〈前に相談した内容が医療機関も含めて共有されていて、ちゃんと気にかけてもらっていることを感じ、安心できる〉
小学生の子を持つ母親からのメッセージだ。
患者は利便性が高まり、薬害リスクも減る。薬局も患者と向き合える機会が増えた。
「単なる効率化ではなく、薬局と患者の信頼関係を深めるツール」
坂井はあなたの薬局の意義を改めてかみしめている。
(敬称略)

























